夫と話し合いにならない|LINE・手紙も使った話し方|宮崎・もあな助産院
「話し合いましょう、って言われても……」
「言ったら、けんかになるだけ」
「そもそも、ゆっくり話す時間がない」
——産後のことをご主人に伝えたいけれど、うまくいかない。そんなふうに感じていませんか。
産後の記事にはよく「ご夫婦で話し合いましょう」と書いてあります。でも、それができたら苦労しないですよね。
でも——「話し合う」は、向かい合って座ってじっくり話すこと、それだけではありません。
LINEで切り出して、少し考えてもらって、短く顔を合わせて決める。手紙で気持ちを伝えてから、話す。——いろいろな方法をつなげながら、話を進めていくこともできます。
この記事では、ご夫婦で話を進めていくための方法を、お伝えできたらと思います。
🌿 この記事でわかること
- 妻のほうが話しかけ、夫のほうが避けている(調査の結果)
- 会話が少ないのは、めずらしくありません
- 「話し合いたい」の中身は、3つに分かれます
- LINE・手紙・対面——組み合わせて使う
- いちばん効くのは「共感」でした
- 書くのも難しいときは
妻のほうが話しかけ、夫のほうが避けている
まず、知っておいていただきたいことがあります。
日本助産学会の研究助成を受けた調査で、1歳6か月児健診・3歳児健診に来られた夫婦116組を対象に、夫婦のやりとりの仕方が調べられています。[1]
この調査では、夫婦のやりとりの仕方が3つのタイプに分けられています。
- 接近・共感——話しかける、話を聞く、気持ちを分かろうとする
- 威圧——強い言い方をする、おさえつけるような言い方をする
- 回避——話を避ける、話題をそらす、黙ってしまう
そして、結果はこうでした。
- 話しかけたり、分かろうとしたりする「接近・共感」は、妻のほうが有意に高い
- 話を避けたり、黙ってしまったりする「回避」は、夫のほうが有意に高い
つまり——妻のほうが話しかけていて、夫のほうが話を避けている。そういう傾向が、調査ではっきり出ているんです。
あなたのご夫婦だけの話ではありません。「どうしてうちの夫は」と思っていたことが、実はよくある形なんですね。
会話が少ないのも、めずらしくありません
同じ調査で、夫婦の会話時間も調べられています。[1]
- 平日の会話が1時間未満——58.7%
- 休日の会話が1時間未満——23.8%
- 平日の会話時間について「増やしたい」——36.2%
平日は6割近くのご夫婦が、1時間も話していません。
そして、夫の帰宅が遅いご家庭ほど、会話時間は少なくなるという関連も出ていました。努力が足りないのではなく、単純に時間がないんです。
「話し合いたい」の中身は、ひとつではありません
ひとくちに「話し合う」といっても、伝えたいことは、いくつかに分かれます。
① いま、助けてほしい
「抱っこを代わってほしい」「これを買ってきてほしい」——いま困っていて、手を貸してほしいとき。
これは、短く、具体的に伝えるのがいちばんです。LINEやメモでも十分に届きます。
② 子育てのことを、一緒に決めたい
保育園のこと、しつけのこと、上のお子さんのこと——ふたりで決めたいこと。
これは、ある程度時間をとって話す必要があります。ただ、今すぐでなくても大丈夫なことが多いです。お互いに余裕のある日を選べます。
ここで困るのが、ご主人が黙ってしまう、「大丈夫だよ」としか言わない——そういうときですよね。もともと話すのが苦手な方もいらっしゃいます。
そんなときに使えそうなことを、いくつか挙げてみますね。全部やらなくて大丈夫です。できそうなものがあれば、くらいで読んでください。
LINEで、先に予告しておく
いきなり「話があるんだけど」と言われると、身構えてしまいます。
「保育園のこと、今度10分だけ話したいな」——先にLINEで送っておくと、ご主人も考える時間がもてます。その場で答えなくていい、と分かるだけで入りやすくなります。
ただ、決めるところまでLINEでやろうとすると、うまくいかないことが多いです。文字だけだと、思っていたのと違うふうに伝わってしまうので。LINEは予告まで。決めるのは短く顔を合わせて——このくらいがちょうどいいかもしれません。
時間と場所を変えてみる
疲れて帰ってきた直後に「話し合いましょう」は、なかなか難しいです。
お出かけのついでや、車の中など——場所が変わると、話しやすくなる方もいます。家でふたりきりだと、かえって話しづらいというご主人もいらっしゃいます。
「どう思う?」ではなく「AとB、どっち?」
話すのが苦手な方に「どう思う?」と聞くと、答えに詰まってしまいます。
選択肢があると、答えやすくなります。「これとこれ、どっちがいいと思う?」くらいの聞き方だと、会話が続きます。
黙ってしまうご主人の意見を聞きたいときは、先に聞く側にまわってみる
「どう思っているのか、さっぱり分からない」——そんなときの方法です。(余裕のあるときだけで大丈夫です。)
話し合いの場では、ついこちらが先に気持ちを話してしまいます。でも、それだと黙ってしまうご主人は、ますます話さなくなることがあります。
ですので、逆にしてみます。
「途中で何も言わないから、思っていること聞かせて」——そう言って、まず聞くだけの日をつくると、ご主人も口を開きやすくなることがあります。
途中でさえぎらない、否定しない。そしてその日は聞くだけで終わってもかまいません。続きは別の日に。
道具に任せてしまう
言葉で説明しなくても、見てもらえば伝わることがあります。
共有カレンダーや、家事・育児の分担を記録するアプリを使うと、やることの多さが目に見える形になります。「こんなにあるんだ」と気づいてもらえることもあります。
それでも難しければ、決めてしまっていい
どうしても話し合いにならないときは、あなたが決めてしまって大丈夫です。
そのうえで、結論だけ伝えておきましょう。「こう決めたよ。気になることがあったら言ってね」——それで十分です。
話し合えないことで、あなたが物事を進められなくなるほうが、よくありません。
③ しんどい気持ちを、聞いてほしい
「今日、大変だった」「もう限界かもしれない」——解決してほしいわけではなくて、ただ聞いてほしいとき。
ここが、いちばんすれ違いやすいところです。
混ざると、うまくいきません
この3つが混ざったまま「話し合おう」とすると、かみ合わなくなります。
とくに——③のつもりで話したのに、①や②のつもりで返されたとき。
「じゃあこうすれば?」「それは前も言ったよね」——そういうことじゃないのに、と思ってしまいますよね。
ですので、伝える前に「これはどれかな」と考えてみると、少し楽になるかもしれません。そして——③のときは、そう言ってしまっていいんです。
LINE・手紙・対面——組み合わせて使う
ここまで出てきた方法を、道具ごとに整理してみますね。
大事なのは、ひとつの方法で全部やろうとしないことだと思います。得意なところが、それぞれちがうからです。
LINE——切り出すときと、短い用件に
ご夫婦のあいだでLINEを使っている方は、とても多いです。ある調査では9割以上という結果も出ています。[2]
LINEで伝えるのは、逃げでも手抜きでもありません。いまはいちばん自然なやり方です。
短くて大丈夫です。「今日しんどかった」「これお願いできる?」——それだけで伝わります。
そして、さきほど書いたように「話したいことがある」と切り出すのにも向いています。
ただ、決めるところまでLINEでやろうとすると、こじれやすいです。文字だけだと、思っていたのとちがうふうに伝わってしまうので。LINEは、話を始めるところと、短い用件に。
文字をはさむと、いい理由
文字には、話すのとちがう良さがあります。
- 書くほうは、余裕のあるときに考えられる
- 読むほうも、落ち着いて受け取れる
産後は、お互いに寝不足で余裕がありません。口に出すと、つい強い言い方になってしまうこともあります。文字なら、その場の勢いに流されずにすみます。
手紙——まとまった気持ちを伝えたいときに
伝えたいことがたくさんあるとき。口に出すと涙が出てしまったり、けんかになってしまったりするとき。——そんなときは、手紙が向いています。
手紙のいいところは、最後まで言い切れることです。途中でさえぎられませんし、ご主人も、読んでから考えられます。
「これお願い」くらいのことなら、冷蔵庫にメモでも十分です。
対面——決めるときは、短く顔を合わせて
そして、最後に決めるところは、顔を合わせたほうが早いです。
といっても、長い時間でなくて大丈夫です。「10分だけ」で足りることも多いです。LINEや手紙で下ごしらえができていれば、その場で一から説明しなくてすみますから。
ぜんぶ対面でやろうとしない。ぜんぶ文字ですませようとしない。——このくらいが、ちょうどいいかなと思います。やり方は、ご夫婦に合うもので大丈夫です。
いちばん効くのは「共感」でした
さきほどの調査では、夫婦関係の満足度に何がいちばん影響するかも分析されています。[1]
結果は、夫も妻も——「接近・共感」の態度が、いちばん強く影響していました。
そして妻の場合、「回避」(避けられること)が満足度を下げる影響が、夫より大きいという結果でした。
ここから言えることがあります。
してほしいのは、解決ではないんです。
「こうすれば?」とアドバイスをもらうことより、「大変だったね」と受け止めてもらうこと。そして——避けられないこと。
ですので、ご主人に伝えるときは、ほしい反応まで一緒に伝えてしまうのも手だと思います。
- 「アドバイスはいらないから、聞いてほしい」
- 「返事だけでもしてくれたら嬉しい」
言わなくても分かってほしい——そう思うのが自然です。でも、言ったほうが早く届きます。
書くのも難しいときは
「伝えたいけれど、何をどう書けばいいか分からない」
そんなときは、まず自分用のメモからで大丈夫です。
スマホのメモでも、紙でも。誰にも見せないつもりで、思ったことを書いてみてください。
書いているうちに、「私はこれがつらかったんだ」「これをしてほしかったんだ」と、形になってきます。そこまで来てから、伝えるかどうかを決めても遅くありません。
それでもしんどいときは
ご夫婦のことは、外から見えにくい分、ひとりで抱えやすいです。
もあな助産院では、ご夫婦のこともお話しいただけます。おっぱいや育児のご相談のついでで、もちろん大丈夫です。
「うちだけかな」と思っていることが、実はよくあることだったりします。話してみると、それだけで少し軽くなることもあります。
(すれ違いの正体については、産後クライシスの記事にまとめています。具体的な分担は、産後パパの役割分担の記事もどうぞ。)
宮崎市・西都市・高鍋町を中心に、出張でのケアもしています。
まとめ
- 話しかけているのは妻のほうで、避けているのは夫のほう——116組の夫婦を調べた調査で出ている傾向です。あなたのご夫婦だけではありません
- 平日の会話が1時間未満の夫婦は58.7%。夫の帰宅が遅いほど会話は減ります
- 「話し合いたい」の中身は3つ——①いま助けてほしい ②一緒に決めたい ③聞いてほしい。混ざるとすれ違います
- ご主人が黙ってしまうときは——LINEで予告/場所を変える/「AとB、どっち?」と聞く/道具に任せる。それでも難しければ決めてしまって大丈夫です
- LINE・手紙・対面は、組み合わせて使えます。LINEで切り出す → 考えてもらう → 短く顔を合わせて決める。ぜんぶ対面でやろうとしなくて大丈夫です
- 夫婦関係の満足度にいちばん効くのは「共感」。そして妻にとっては「避けられること」がいちばんこたえます
- だから——「聞いてほしいだけ」「返事だけでも」と、ほしい反応ごと伝えてしまって大丈夫です
- 書くのも難しいときは、まず自分用のメモから
話し合う方法は、ひとつではありません。ご夫婦に合うやり方が、きっとあります。
参考文献・補足
- [1] 森田千穂(新潟青陵大学)「育児期における夫婦のコミュニケーション態度の特徴と夫婦関係満足度に及ぼす影響 ―1歳6か月児・3歳児を育てる夫婦に着目して―」日本助産学会研究助成金(若手研究助成)研究報告書。2019年2〜3月、1歳6か月児健診・3歳児健診を受診した児の両親を対象とした調査(116組の夫婦ペアデータ)
- [2] 夫婦間のLINE利用に関する民間調査による
- 本記事は、上記および助産師としての臨床経験をもとに作成しています
投稿者プロフィール
- もあな助産院(宮崎市)院長。2003年に助産師免許を取得し、20年以上にわたり地域のお母さんと赤ちゃんに寄り添ってきました。もあな助産院は2012年に開業。乳房ケア(BSケア)・産後ケア・クレニオセイクラルセラピーなどを通して、母子のケアを行っています。「お母さんと赤ちゃんが安心して妊娠・出産・産後を過ごせるように。そして、おふたりがもともと持っている力を、しっかり発揮できるように——そんなケアを心がけています。」
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