おっぱいを嫌がるように見える…乳頭混乱かな?|宮崎・もあな助産院

「おっぱいを近づけると、泣いて反り返ってしまう」

「哺乳瓶なら、あんなにごくごく飲むのに」

「おっぱいを嫌がっているように見えて、つらい」

——そんなふうに感じて、落ち込んでいませんか。

この記事では、宮崎で助産院を開業している助産師が、「乳頭混乱」と呼ばれるものについてお伝えします。まず、いちばん大事なことを先に。——嫌がっているように見えても、赤ちゃんはおっぱいが嫌いになったわけではありません。

お母さんを拒否しているように感じて、悲しくなることもあるかもしれません。でも、絶対にそうではありません。赤ちゃんも「どうしたらいいかな?」と、戸惑っているだけなんです。

実は、私もそうでした

うちの子も、生後3日目くらいから、母乳をあげようとすると泣いて反り返って、飲んでくれない時期がありました。

「なんでこんなことになったんだろう」——そう思って、悲しくなりました。だから、いま困っておられる方の気持ちは、よく分かります。

でも、少しずつ、吸ってくれるようになりました。

この記事では、「今日、どうしたらいい?」をお伝えしていきたいと思います。

🌿 この記事でわかること

  • 「乳頭混乱」って、どんなもの?
  • こんなサインが出ます
  • どうして起きるのか(母乳の出とは、関係ありません)
  • ミルクを足したことは、失敗ではありません
  • おうちでできること
  • 相談してほしいとき

「乳頭混乱」って、どんなもの?

「乳頭混乱」は、はっきりした医学用語というより、育児のなかでよく使われる言い方です。

意味は——哺乳瓶の乳首とお母さんのおっぱいで飲み方がちがうために、赤ちゃんが戸惑ってしまう状態のことです。

赤ちゃんにとっては、「どっちで飲むんだったっけ?」と迷っているような状態。決して、お母さんを選ばなくなったわけではありません。

こんなサインが出ます

  • おっぱいを近づけると、泣いてしまう
  • のけぞる・反り返る
  • くわえても、すぐに離してしまう
  • 哺乳瓶だと、機嫌よくごくごく飲む

目の前でこれをされると、嫌がられている、拒否されたと感じてしまいますよね。そのつらさは、本当によく分かります。でも、そう見えるだけで、赤ちゃんの側で起きているのは、まったく別のことなんです。

どうして起きるの?——吸い方が、ちがうんです

いちばんの理由は、おっぱいと哺乳瓶とで「吸い方」がまったくちがうことです。

赤ちゃんは、どうやって吸ったらいいのか、戸惑っているんです。

おっぱいは深くくわえる必要がありますが、哺乳瓶はもっと少ない力で飲めます。そして、とくにちがうのが舌の使い方です。

おっぱいを飲むときの赤ちゃんは、舌を波打たせるように動かして飲んでいます。いっぽう哺乳瓶では、出てくるものを舌でうけとめるような、ちがう動かし方になります。

同じ「吸う」でも、お口のなかでしていることが、まるでちがうんです。ですから、このちがいに赤ちゃんがまだ慣れていないだけ——そう考えてあげてください。

もうひとつ、「出てくるまでの時間」もちがいます

哺乳瓶は、吸えばすぐに出てきます。待つ必要がありません。

いっぽうおっぱいは、赤ちゃんが吸いはじめてから、母乳が湧いてくるまでに少しの間があります。赤ちゃんは、この「待つ時間」にも戸惑ってしまうんです。

これは「母乳が出ていないから」ではありません

ここを、いちばん誤解してほしくないところです。

母乳がたくさん出ている方でも、吸いはじめてから湧いてくるまでには時間がかかります。おっぱいは、そういう仕組みなんです。量の多い少ないとは、関係がありません。

ですから、「私のおっぱいが出ていないせいだ」ということでは、まったくありません。

哺乳瓶のほうがいい、という話でもありません

「待たなくていい」というのは、赤ちゃんにとってただ勝手がちがうというだけで、そちらが優れているという意味ではありません。

おっぱいには、待って、吸って、湧いてくる——その時間そのものがあります。赤ちゃんがそのリズムを覚えていけば、ちゃんと飲めるようになっていきます。

ですから、母乳をあげるときには、「待っててね」と声をかけながら吸わせてみてください。

赤ちゃんに、まだ言葉の意味は分かりません。それでも、お母さんの声は伝わります。そして——湧いてくるまでの時間が、「困った時間」ではなくふたりの時間に変わります。

(くわえ方そのものがうまくいかないときは、赤ちゃんがうまくおっぱいを吸えないときの記事もどうぞ。)

ミルクを足したことは、失敗ではありません

ここで、どうしてもお伝えしたいことがあります。

この話を読んで、「哺乳瓶を使ったから、こうなってしまったんだ」と、ご自分を責めてしまう方がいらっしゃいます。でも、そうではありません。

ミルクを足したのには、そのときの理由があったはずです。

赤ちゃんの体重のこと。あるいは、出血が多かった、血圧が高かった——お母さんのお身体を守ることも、同じくらい大事です。

そのときに必要だったから、足したんです。それは、赤ちゃんとお母さんを守るための判断でした。

そして、乳頭混乱は「もう二度と戻らないもの」ではありません。

月齢にもよりますが、早い時期であるほど、また吸えるようになっていく赤ちゃんが多いと感じています。ですから、不安な時は、早めに相談していただくほうがいいんです。

月齢が進んでいる場合も、まずはその子に合った方法を、一緒に探しましょう。

(ミルクの足し方そのものについては、混合育児の考え方の記事にまとめています。)

おうちでできること

「魔法のクチュクチュ®」で、乳首をやわらかく

まず、赤ちゃんが吸いやすい状態にととのえてあげましょう。

「魔法のクチュクチュ®」で乳頭・乳輪をやわらかくして、吸いやすい状態にしておきます。それから授乳してみてください。

陥没乳頭の方も、同じです。乳輪と乳頭をやわらかくしてから、試してみてください。

やり方は、BSケア「お母さんへ」のページで紹介されています。吸わせ方も、写真と動画で見ることができます。文章より分かりやすいので、ぜひご覧になってみてください。

お腹がすきすぎる前に、おっぱいを

泣いて泣いて、待てない状態になってからだと、「出てくるまで待つ」ことがどうしても難しくなります。泣きだす前の、そわそわしはじめたころがねらい目です。

機嫌のいいときに、軽く試してみる

眠りかけのとき、目が覚めたばかりのとき。お腹がぺこぺこではないタイミングのほうが、すんなりくわえてくれることがあります。「飲ませる」ではなく「くわえてみる」くらいの気持ちで大丈夫です。

少しだけミルクを飲ませてから、おっぱいへ

おなかがすきすぎていると、どうしても待てずに泣いてしまいます。そこで——

哺乳瓶で少しだけミルクを飲ませて、赤ちゃんが泣きだす前に、さっとおっぱいをくわえさせてみてください。

少し満たされているぶん、赤ちゃんに余裕があります。その余裕があると、母乳が湧いてくるまでの時間を、待てることがあるんです。

どれくらい飲ませたらうまくいくかは、赤ちゃんによってちがいます。ですから、少しずつ飲ませながら、そのつど授乳してみましょう。

深くくわえられる姿勢をさがす

抱き方を変えるだけで、ぐっとくわえやすくなることがあります。(授乳の抱き方4つの記事をどうぞ。)

哺乳瓶は、急がせないで

勢いよく出るものよりゆっくり出るタイプの乳首のほうが、おっぱいとの差が小さくなります。飲ませるときも、赤ちゃんのペースを待ちながら、途中で休ませてあげてください。

まずは、なめるところから

赤ちゃんが吸ってくれない日が、あるかもしれません。

でも、乳首をなめてくれた。ちょっとだけ吸ってくれた。——まずは、そこから始めてみましょう。

「飲めたかどうか」で考えてしまうと、うまくいかない日ばかりに思えてきます。でも、おっぱいに口をつけられた、それだけでもう一歩すすんでいます。

うまくいかない日は、押しつけない

お母さんが焦ると、それは赤ちゃんにも伝わります。今回は無理だな、と思ったら、やめて大丈夫です。

そして——「また明日」ではありません。次の授乳のときに、また試してみましょう。チャンスは、1日に何度もあります。

ちょっと疲れてきたな、というときは、1回、授乳をお休みしてもいいんです。

吸えなかったときは、搾乳を

赤ちゃんが吸えなかったときは、搾乳をして、母乳の分泌を維持していきましょう。

大事なのは、乳房から母乳が出ることです。授乳でも搾乳でも、出ていれば大丈夫。ですから、「今回は無理だな」と思ったときこそ、搾っておいてください。

搾乳は、少しずつで大丈夫です。全部を出しきらなくてかまいません。

そして、搾乳器よりも、手で搾ることをおすすめします。

手搾りのやり方も、BSケア「お母さんへ」のページの動画で確認できます。

(見てもうまく搾れない、というときは、お手伝いできます。遠慮なく声をかけてください。)

こんなときは、相談してください

ひとりで抱えこまなくて大丈夫です。こんなときは、遠慮なく声をかけてください。

  • 授乳のときに、おっぱいを吸えなくて困っている
  • どうやって対応したらいいのか、分からない
  • ミルクの量が、だんだん増えていく
  • 母乳の分泌が、気になる

「こんなことで相談していいのかな」と思わなくて大丈夫です。困っている、それだけで十分な理由です。

なお、体重の増えかたやおしっこの量が明らかに減っているときは、小児科の先生にも相談してくださいね。

オンラインの無料相談会もあります

NPO法人BSケア®が主催している「母乳育児なんでも相談会」という会があります。

ここでも、「赤ちゃんに吸わせられない」というお悩みで相談される方がいらっしゃいます。ひとりで抱えている悩みではないんです。

  • 月1回の開催
  • オンライン(ZOOM)なので、全国どこからでも参加できます
  • 参加費は無料

講師は、私がBSケアを学んだ先生です。この相談会で吸えるようになりました、というご報告もいただいています。

宮崎の方にかぎらず、全国どこにお住まいの方でも参加できます。この記事を遠くから読んでくださっている方も、どうぞ。

ぜひ、参加してみてください。日程はBSケアのサイトでご確認いただけます。

宮崎で、授乳のことを相談したいときに

もあな助産院では、母乳外来や乳房ケア(BSケア)を行っています。

実際に授乳を見せていただくと、その赤ちゃんに合った抱き方やくわえ方を、一緒にさがすことができます。文章では分からないことが、目の前で見ると分かることも多いんです。

宮崎市・西都市・高鍋町を中心に、出張でのケアもしています。

ご予約:LINEまたはお電話で受け付けています。

まとめ

  • 「乳頭混乱」は、哺乳瓶とおっぱいの飲み方のちがいに、赤ちゃんが戸惑っている状態です
  • おっぱいと哺乳瓶では、舌の使い方がちがいます。どうやって吸ったらいいのか、赤ちゃんが戸惑っているんです
  • もうひとつ、おっぱいは湧いてくるまでに少し時間が必要。その待つ時間にも戸惑ってしまいます
  • これは「母乳が出ていないから」ではありません。たくさん出ている方でも、湧いてくるまでには時間がかかります
  • 嫌がっているように見えても、おっぱいが嫌いになったのでも、お母さんを拒否しているのでもありません
  • ミルクを足したことは、失敗ではありません。そのときに必要だったから、足したんです
  • 「魔法のクチュクチュ®」で乳頭・乳輪をやわらかくして、吸いやすい状態にしてから授乳を。陥没乳頭の方も同じです
  • お腹がすきすぎる前に・機嫌のいいときに・押しつけないで。まずは「なめる」「ちょっと吸える」から始めましょう
  • 哺乳瓶で少しだけ飲ませて、泣きだす前にさっとおっぱいへ——待つ余裕が生まれます
  • おっぱいのときは「待っててね」と声をかけながら。待つ時間が、ふたりの時間になります
  • 吸えなかったときは搾乳を。乳房から母乳が出ることが大事です。少しずつで大丈夫・手搾りがおすすめです
  • BSケア®のオンライン無料相談会(月1回・ZOOM・全国から参加可)もあります。ここで吸えるようになった方もいらっしゃいます
  • 早い時期であるほど、また吸えるようになる赤ちゃんが多いです。気になったら早めにご相談ください
  • 吸えなくて困っている、対応が分からない、ミルクが増えていく、分泌が気になる——そんなときは相談してください

うまくいかない日があっても、大丈夫です。赤ちゃんとお母さんのペースで、ゆっくりいきましょう。

参考文献・補足

  • 「乳頭混乱」は育児の場面で広く使われている言い方で、厳密な医学用語ではありません
  • 本記事は、一般的な医学情報を参考に、助産師としての臨床経験をもとに作成しています

投稿者プロフィール

松田ゆかり
もあな助産院(宮崎市)院長。2003年に助産師免許を取得し、20年以上にわたり地域のお母さんと赤ちゃんに寄り添ってきました。もあな助産院は2012年に開業。乳房ケア(BSケア)・産後ケア・クレニオセイクラルセラピーなどを通して、母子のケアを行っています。「お母さんと赤ちゃんが安心して妊娠・出産・産後を過ごせるように。そして、おふたりがもともと持っている力を、しっかり発揮できるように——そんなケアを心がけています。」