母乳が出ない・足りない気がする…分泌を増やす方法|宮崎市の母乳相談はもあな助産院へ

「母乳をあげたいのに、うまく出ない…」「量が少ない気がして不安…」──産後のお母さんから最もよく聞かれるお悩みのひとつです。

母乳の分泌には個人差がありますが、正しいケアと知識があれば、多くの場合は改善できます。この記事では、助産師の立場から母乳が出るしくみと、分泌を増やすための実践的な方法をお伝えします。

母乳の分泌を助ける食事・休息・マッサージ・水分補給などのセルフケアをやさしく描いたイラスト。授乳中のお母さんへの実践的なアドバイスをイメージした画像。

母乳が出るしくみ

母乳の分泌には、主に2つのホルモンが関わっています※1

  • プロラクチン:乳腺に働きかけて母乳を「つくる」ホルモン。赤ちゃんが乳首を吸うことで分泌が増えます。
  • オキシトシン:乳腺に蓄えられた母乳を「出す」ホルモン。赤ちゃんの泣き声や温もりを感じただけでも分泌されます。

つまり、母乳は「赤ちゃんに吸ってもらうほど出るようになる」というしくみになっています。このサイクルを「需要と供給」と呼び、授乳の基本です。

また、「母乳が少ない」と感じる原因の多くは、分泌量そのものの問題ではなく、授乳の頻度と時間・ラッチオン(くわえ方)・ストレス・水分不足などによるものです。

母乳分泌を増やす8つの方法

① とにかく頻繁に授乳する(頻回授乳)

最も効果的な方法は、1日8〜12回以上、2〜3時間おきに授乳することです※2。赤ちゃんが乳首を吸うことでプロラクチンが分泌され、母乳の産生が促されます。

「まだ出ていないから飲ませても意味がない」「張っていないから出ていない」というのは、よくある誤解です。乳房が張っていなくても母乳はつくられており、赤ちゃんに吸ってもらうこと自体が、母乳を増やすための最大の刺激になります。

特に意識していただきたいのが、出生後〜14日間ごろの「ゴールデンタイム」です。この時期は母乳が増えやすい時期といわれており、ここでこまめに授乳を重ねることが、その後の母乳の出やすさにつながりやすいとされています。もちろん、この時期を過ぎても授乳を続けることで母乳は増えていきますので、焦らず、できる範囲でこまめな授乳を心がけましょう。

また、病院で「授乳は片方5分ずつ」と教わった方もいるかもしれません。けれど、赤ちゃんは5分ずつでは満足しないことが多いのです。

母乳がぐっと湧き出てくる「射乳(しゃにゅう)」というタイミングは、お母さんによってさまざまです。しかも、ちょうど陣痛のように、一旦おさまってはまた湧いてくる…という波を繰り返します。そのため、時間で区切って授乳を切り上げてしまうと、母乳が湧いてくる前に授乳が終わってしまい、せっかくの分泌のチャンスを逃してしまうことがあります。

時計ではなく、赤ちゃんの様子を見て授乳することが大切です。赤ちゃんがゴクゴク飲むのが落ち着いてきたら、もう片方に切り替えるとよいでしょう。なお、片方を時間で早く切り上げてしまうと、最初に出てくる「前乳(さらっとした母乳)」ばかりになり、後から出るカロリーの高い「後乳(こうにゅう)」を飲めずに、体重が増えにくくなることもあります※9

② 正しいラッチオン(くわえ方)を確認する

赤ちゃんが乳首だけでなく乳輪(乳首のまわりの黒ずんだ部分)まで深くくわえることが大切です。浅いくわえ方では乳腺が十分に刺激されず、母乳の分泌が促されません※3

なお、母乳の出が良すぎる場合には、赤ちゃんがむせないように浅く吸う子もいます。それ自体が悪いわけではありませんが、一般的には深くくわえる(深い吸着)ほうが、乳腺がしっかり刺激され、乳首の痛みも起こりにくくなります

正しいラッチオンの図解イラスト。赤ちゃんが口を大きく開け、乳首だけでなく乳輪まで深くくわえて乳房に吸着している様子と、乳腺の断面図を示した母乳育児の解説画像。
赤ちゃんが口を大きく開け、乳輪まで深くくわえるのが理想的なラッチオンです。

正しいラッチオンのサインは:

  • 赤ちゃんの口が大きく開いている
  • 下唇が外側に向いている(外反している)
  • 授乳中に乳首が痛くない(または軽い違和感程度)
  • ゴクゴクと飲む音・喉の動きが確認できる

ラッチオンに不安がある場合は、助産師に直接見てもらうことをおすすめします。

③ 授乳後に搾乳(さく乳)を追加する

赤ちゃんがうまく吸えずに母乳を増やしたい方や、乳房の張りがとれず違和感や痛みがあるときには、搾乳(さく乳)をおすすめします。そして、できれば手搾りをおすすめします。母乳を出すことで乳腺への刺激が増え、次の母乳産生が促されます。
特に産後早期(生後2〜3週間)は分泌量を確立する大切な時期なので、授乳後の搾乳が効果的です※4

乳房の張りがとれないときは、いくつかの可能性が考えられます。

  • 母乳が出すぎている
  • 乳腺の一部が詰まっていたり、乳汁の流れが停滞している
  • 赤ちゃんがうまく飲みとれていない

ただし、母乳が十分に出ているのに搾乳をしすぎると、体は「もっと必要だ」と判断してどんどん母乳をつくってしまい、かえって張りや痛みが続くことがあります。搾乳していいのか迷ったときや不安なときは、無理をせず助産院にご相談ください。

張りや詰まり、乳汁の流れの停滞が気になるときは、助産院での乳房ケア(BSケアなど)を受けるのもひとつの方法です。BSケアは赤ちゃんの吸い方にならった、やさしく痛みの少ないケアで、乳房の状態をやわらげ、母乳の流れを整えるのに役立ちます。もあな助産院でもご相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。

④ 水分をたっぷり摂る

母乳の約90%は水分です。授乳中は意識して水分を摂ることが大切ですが、無理に2〜3リットルも飲むと胃に負担がかかり、かえって食欲が落ちてしまうこともあります。目安としては1日1.5〜2リットルくらいを、授乳のたびに1杯の水やお茶を飲む習慣をつけると、無理なく自然に補給できます。

水・麦茶・ハーブティーなど常温または温かくして、刺激の少ない飲み物が適しています。

⑤ 栄養バランスの良い食事をとる

特定の食べ物が母乳を劇的に増やすという科学的なエビデンスは現時点では限られていますが、バランスの良い食事が乳腺の働きを支えることは確かです※6

とはいえ、「主食・主菜・副菜をそろえて1日3食」というのは、産後で休む間もないお母さんには簡単なことではありません。きちんとした食事を毎回用意できるのは、家族やサポートしてくれる人がいてこそ、というのが現実です。だからこそ、手間をかけずに必要な栄養がとれる工夫が大切になります。

おすすめは、具だくさんのスープや味噌汁をまとめて作っておく方法です。鍋いっぱいに作れば数食分になり、温め直すだけで食べられます。

  • 野菜・肉や魚・豆腐などを大きめに切ってまとめて煮込めば、たんぱく質・鉄分・野菜が一杯でとれる
  • 小松菜・ほうれん草・ひじき・根菜を入れれば、不足しがちな鉄分・カルシウムも補える
  • 多めに作って冷蔵・冷凍しておけば、片手でも食べられて授乳の合間にも便利
  • おにぎりやパンを添えるだけで、無理なく一食が整う

完璧を目指さなくて大丈夫です。
なお、脂っこい食事や甘いもののとりすぎは乳腺炎のリスクを高めることがあるため、ほどほどを意識しましょう。

⑥ 休息とリラックスを大切にする

ストレスや疲労は、オキシトシンの分泌を妨げます。「母乳が出ない」という不安そのものが、母乳を出にくくする悪循環につながることがあります※7

  • 赤ちゃんが寝ているときに一緒に休む
  • 家事は手を抜いていい。パートナーや家族に頼む
  • おいしいものを食べたり、飲んだり、ほっとする時間をつくるのも大事です
  • 温かいシャワーや入浴でからだを温め、リラックスする

⑦ 乳房ケア・温罨法(おんあんぽう)を活用する

授乳前に乳房を温めたり、やさしくケアすることで、乳腺の流れがよくなり母乳が出やすくなります。乳房への適切なケアは、お母さんのリラックスを促し、母乳育児を支えると報告されています※8

ただし、強い力でのケアは乳腺炎などのトラブルを引き起こすことがあります。やさしく、痛みのない方法で行うことが大切です。不安な場合は助産師に相談し、指導を受けてください。

もあな助産院では、NPO法人BSケアの「魔法のクチュクチュ」をおすすめしています。

⑧ からだを温めて血流をよくする

母乳は、お母さんの血液からつくられています。そのため、血流をよくすることは、母乳の分泌を助けることにつながります。

冷えは血流を悪くする大きな原因です。とくに産後は体が冷えやすいため、からだを温める工夫を取り入れましょう。

  • 湯船にゆっくり浸かって体の芯から温まる
  • 首・手首・足首を冷やさないようにする
  • 肩や首まわりを軽くストレッチして血のめぐりをよくする
  • 温かい飲み物や、体を温める食材をとり入れる

冷え対策については、こちらの記事でくわしく紹介しています。あわせてご覧ください。

👉 産後の冷えとセルフケア|からだを温めて回復を助ける7つのポイントを助産師が解説

「母乳が足りているか」の判断基準

搾乳量や乳房の張り具合だけでは母乳の十分さはわかりません。以下のポイントを参考にしてください※2

  • 1日6枚以上のおむつが濡れている(生後5日以降)
  • 生後3〜4日以降、うんちが黄色くなっている
  • 生後2週間頃までに出生体重に戻っている
  • 授乳後に赤ちゃんが満足そうにしている

これらが確認できていれば、「見た目に乳房が張らない」「搾乳してもあまり出ない」と感じていても、赤ちゃんには十分届いていることがほとんどです。

こんなときは助産師相談を

以下に当てはまる場合は、自己対処だけでなく専門家のサポートを受けることをおすすめします。

  • 生後2週間を過ぎても体重が出生体重に戻っていない
  • 1日のおむつ交換が6枚を大きく下回る
  • 乳房が硬く張り、発熱・痛みがある(乳腺炎の疑い)
  • 乳首に亀裂や出血がある
  • 授乳のたびに強い痛みがある
  • 「もう母乳をやめたい」と感じるほど追い詰められている

母乳外来・助産院・地域の保健センターなどでサポートを受けることができます。
もあな助産院でも授乳・母乳に関するご相談を受け付けています。

赤ちゃんが吸っていることが大事

大切なのは、たくさん出ているかどうかよりも、赤ちゃんが乳房を吸ってくれているということそのものです。吸ってもらうこと自体が母乳の分泌を促し、何よりお母さんと赤ちゃんの絆を深めてくれます。たとえ量が少なくても、母乳を吸うことにはちゃんと大切な意味があります。

実は、私自身も赤ちゃんの体重がなかなか増えず、悩んだ時期がありました。「なんとか母乳を増やしたい」と、その頃はできることをやっていました。そんなとき、私のBSケアの先生が「できることは充分やっている、というマインドも大事」と声をかけてくださいました。

この記事を読んでくださっている方も、きっと「赤ちゃんのためにできることをしたい」と思って、調べたり、実践したりしているのだと思います。その日々の積み重ねそのものが、すでに赤ちゃんへの愛情です。

私は「母乳だけで育てたい」と思って頑張っていましたが、その時期は混合栄養でした。離乳食が始まり、生後9か月ごろになって、ようやく「母乳のみ+離乳食」になりました。今振り返ると、量に悩み、一生懸命だったその時間そのものが、とても大切なものだったと感じます。

「やれることはやったよね」──当時はなかなかそう思えませんでしたが、後になってこの言葉が、すとんと心に落ちてきました。今まさに悩んでいるあなたにも、いつかこの言葉が届けばいいなと思います。

まとめ

母乳分泌を増やすために最も大切なことは、頻繁に・正しく・リラックスして授乳を続けることです。

  • 頻回授乳(1日8〜12回)が母乳産生の基本
  • ラッチオンを見直すだけで改善するケースも多い
  • 水分・栄養・休息を十分にとる
  • 不安なときは一人で抱え込まず、助産師に相談する

「母乳をあげたい」というお母さんの気持ちは、赤ちゃんへの大切な愛情です。
そして、「母乳をあげたいけど、しんどい」「母乳あげたいけど、あげれない」という方もいらっしゃると思います。
もあな助産院はその気持ちに寄り添いながら、いつでもそばでサポートします。

母乳・授乳のお悩みはもあな助産院へ

「おっぱいが張ってつらい」「母乳が足りているか不安」「授乳が痛い」など、ひとりで悩まないでください。もあな助産院では、赤ちゃんの吸い方にならったやさしい乳房ケア(BSケア)でサポートします。


参考文献

  1. Lawrence RA, Lawrence RM. Breastfeeding: A Guide for the Medical Profession. 8th ed. Elsevier; 2015.
    (母乳分泌ホルモン:プロラクチン・オキシトシンのメカニズム)
  2. World Health Organization (WHO). Infant and young child feeding: Model Chapter for textbooks for medical students and allied health professionals. WHO Press; 2009.

    https://www.who.int/publications/i/item/9789241597494

    (頻回授乳の推奨・母乳充足の判断基準)
  3. Cadwell K, Turner-Maffei C. Pocket Guide for Lactation Management. Jones & Bartlett Learning; 2014.
    (正しいラッチオンと母乳分泌への影響)
  4. Morton J, et al. Combining hand techniques with electric pumping increases milk production in mothers of preterm infants. J Perinatol. 2009;29(11):757-764.
  5. 厚生労働省.「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」.

    https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf

    (授乳中の水分・栄養摂取の指針)
  6. Lauwers J, Swisher A. Counseling the Nursing Mother: A Lactation Consultant’s Guide. 6th ed. Jones & Bartlett Learning; 2015.
    (食事と母乳分泌の関係)
  7. Uvnäs-Moberg K, et al. Self-soothing behaviors with particular reference to oxytocin release induced by non-noxious sensory stimulation. Front Psychol. 2014;5:1529.

    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2014.01529/full

    (ストレスとオキシトシン分泌抑制)
  8. 三根有紀子・寺田恵子・佐藤香代.「児の母乳吸啜メカニズムに基づく乳房ケア(BSケア)のリラクゼーション効果に関する研究」.母性衛生. 2010;51(2):376-384.(日本母性衛生学会)
    (乳房ケア(BSケア)のリラクゼーション効果に関する研究)
  9. NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC).「Q5:何時間ごとに、また1回に何分くらい授乳をしたらよいのでしょうか?」母乳育児情報.

    https://jalc-net.jp/breastfeeding/information/breastfeeding/p6400/

    (授乳時間を制限せず、赤ちゃんに合わせて授乳すること・前乳と後乳について)